073 私とMagnolia

フラクタルのミスリード担当、のぞみです。

訪問看護、季節の移ろいが感じられて、良いなぁと思う。運転しながら早咲きの桜や、あっちは桃かな、陽当たりが良いところは木蓮の花が開いてるなぁ、とか思いながら見ています。

 
利用者さんのお家に飾られてるお花、かかってる音楽、きっと全部意味とか、そのひとにとって歴史があるものなんだろうな。
病院にいたら、お見舞いのお花は鉢植えは良くない。そもそも感染防止の観点から生花持ち込み禁止のところも多い。多床室ならイヤホンしないと音楽はかけられない。口ずさむことなんて、できない。
 
その日訪問した利用者さんは、がん末期のかた。レベルクリア、とは言い難いけど失見当識、とまでは言えない。もちろん会話は成り立つし、いつも笑顔で迎え入れてくれます。
持続皮下注射で麻薬を使用して疼痛コントロールを行ってる。でもPCAでレスキューを使用する回数がじわじわ増えてきてて、かといってベースを増やすと呼吸抑制かかっちゃうかも、鎮静も。まだ上手く、疼痛だけじゃなくて、他のことも諸々コントロールの最中。
 
訪問するとベッドがあるお部屋には、聴き覚えがある歌手の声。誰だっけ。と思いながらも、めちゃくちゃ緊張してたんです。なぜなら、持続皮下注射のサーフロー交換日。
 
その前の週も行った。やらせて頂いた。手技は問題ない、普通に出来てた、あれで大丈夫と同行の看護師さんからは言ってもらえた。
 
でもまだ二回目。
生まれてこのかた二回目!
 
いや、皮下注、するよ?すごいする。
インスリン、クレキサン、あと名前忘れちゃったけど関節リウマチのお薬。ちなみに初めて皮下注射やったのは丸山ワクチン。
 
でも皮下サーフロー留置って、噂には聞いてたけど訪問看護行って初めて見た手技です。
 
いちおう管理者さんには『不安!!!』ってめちゃくちゃアピールしたんですけど『自分を信じて~~~!』と言われたのみ(渋々ひとりで出発するときに、もし万が一無理だったら管理者さんを呼ぶように、とは言ってくれたけど)で、訪問することになりました。悪いけどわたしは誰よりも自分が信用ならない……。
 
で、まぁ、やります。
かかってる音楽が全然耳に入らない。
 
静脈に留置するときって血管に入ると、スッ……ってするじゃないですか。
皮下注射。皮膚をつまみ上げて、皮膚と角度をつけないで刺す。あのスッ……の感覚がなくて、ずっと抵抗がある。
いつもの癖で内筒を途中で止めて外筒を進めたくなるけど、皮下なので最後まで全部進めて、内筒を抜く。
(あと、しばらくインサイト使ってたからサーフローに安全装置ないことを思い出して冷や冷やした)
 
で、接続、固定、持続のポンプ確認。という流れ。どうにか出来た。それでもすごく不安だったけど。
 
「終わりましたよ」と伝えたところでやっと音楽が耳を抜けてく。あー、この曲絶対知ってる。でもタイトルわかんない、歌手も相変わらずわかんない。聞いたことある声なんだけどな。
 
利用者さんは、やっぱりお薬が流れてない時間が少しでもあることが不安なんだろうと思う。終わって片付けやルートの整理をさせてもらってると、ほっとした顔を向けてくれた。笑顔で「ありがとう」。と。
 
「のぞみさん、痛いのは、仕方がないんだよね?これもこの病気の、宿命?」
 
こう言われたのが、結構ショックだった。利用者さんは笑顔のまま。
 
もちろん、がんだから、痛みは出る。
でもそれをコントロールしてる。
しきれてないのは、最近のレスキューの使用回数を見ててみんなわかってた。本人も家族も医師も薬剤師も看護師もみんな。前日に訪問診療が入って、これから、というか今すぐジャストナウ、薬局のかたが来て追加で処方が出た頓服の鎮痛薬を持ってくる予定。
 
「この病気は、どうしても痛みが出ます。でも、お薬でコントロールができる痛みなので、1日3回飲んでるお薬と、このポンプから流れてるお薬で。それから今から持ってきてくれるお薬が痛み止めなので、それを飲んでみて、痛みがどうなったのか教えてください。また評価してみましょう」
 
こう言うのがわたしにとっての精一杯だった。
 
また音楽は聴こえなくなってた。
 
身体的疼痛の訴えだけじゃなくて、恐らく、これはスピリチュアルペインの吐露だったんだろうな。って本当はその場で気が付いた。
でもかける言葉はなかったから、痛みが強いって言っているところをマッサージすると伝えてみた。喜んでくれたように見えた。逃げたかった。どうにか、逃げなかった。でもなんだか引っかかる感じは否めない。
 
訪問が終了して、次の利用者さんのところに向かいながら運転してるとき。道に咲いてる木蓮の木を見かけて、ひとつ気が付いたことがある。
 
 
流れてたの、スターダスト・レビューだ。
 
でも確かめられない。わたしには。