人は香りでなにかを思い出すことがありますよね。私は金木犀の香りで友人を思い出します。
その友人はもう20年以上前に知り合いました。今はなき「ICQ」というメッセージアプリがありまして、ICQユーザーの友達探し掲示板で「ホームページの作り方を教えてください」という書き込みがあったので、それをきっかけに出会いました。掲示板で出会うというのも、時代を感じますね。
ICQでメッセージのやり取りをして知ったのですが、その人も大学生。年齢が近かったために意気投合し、連日ホームページの構成で話が盛り上がりました。当時は簡単に作れるサイトなどはなく、構文を調べてはHTMLに貼り付け、実際に動くかインターネットにアップして調べるというのを繰り返して、ホームページを作っていました。彼女は日々がんばってホームページを作っていました。掲示板を作ったり、人数カウンターを設置したりと、彼女も自分で調べてはどんどん作り込みをして、それは素敵なホームページを作っていました。
ホームページのタイトルは彼女の金木犀の名前から取った素敵な名前でした。「一番好きな植物」だそうです。当時、金木犀の香りを知らなかった(現在も植物は疎いです)私は、独特の香りの花だとも知らず「良い名前だね」なんて返事をしていた気がします。
ある日、彼女が設置したblogに「体が思うように動かない」なんていう記事がアップされました。当時は看護師でも看護師を目指していたわけでもない私は「体調悪いの?」なんて返信をしていました。その後も発熱したり、ベッドで動けなくなったりと、なんだか様子がおかしいなと思っていました。
ある時、大学病院に検査に行ったそうです。診断名は「ユーイング肉腫」。調べればすぐに出てきますが、5年生存率の決して高くない病気です。
そこからは、ユーイング肉腫の闘病記になりました。自宅に戻って過ごしても、急な高熱が出てそのまま意識を失い救急搬送されたとか、今日は落ち着いているなど、毎日blogが更新されていました。入院中もホームページをいじっているのか、どんどん見やすく、いろんな改良がされていました。「今日も更新したんだね」なんてICQで送ったりしていました。(記憶が間違いなければ、当時はWi-Fiも普及していなかったので、公衆電話からモデムを使い更新していたと思います。更新の仕方を教えた記憶があります)
その後も自宅にいたり、入院したりを繰り返していました。安定している時はいろんなことを楽しめている様子だけど、苦しい時は本当に苦しそう。言葉も出なくなり、記憶なく入院していたなんて記事もありました。
ある年の1月。成人式を終え、彼女は再度入院。「このまま死んじゃうのかな。今度こそは厳しいかも」という内容が書かれていましたが「いままでなんとかなったから、なんとかなる、、、かな?」って感じの書き方をしていました。
それが最後の書き込みになり、その後病院で息を引き取ったと、家族がそのblogに書いていました。
彼女とは2年ぐらいの付き合いでしたが、ホームページを一緒に作れたこと、そして彼女の気持ちを表現できる場所を作れたことは、今でもよかったなと思っています。
一度も会ったこともなく、ただネット上だけのやり取りだけ。住所も知らない。本名も知らない。どんな風貌かも知らない関係。お互いにホームページが出来ていくことが喜びでした。
金木犀の香る頃、いつも彼女を思い出します。
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